DSL(Digital Subscriber Loop) は高速なインターネット・アクセス技術で、一般的 なメタルの電話線(電話会社の専門用語で、別名 "より対銅線回線")を 使います。DSL は、既存の電話会社のネットワークを使って、ISP にダイレクトかつ 専用で接続できます。米国の 80 % もの電話線で利用ができるように 設計してあります。DSL は、回線適応変調方式を使うことにより、 8 Mbps もしくは さらに高速な転送速度を実現できます。
DSL サービスは、家庭や小規模事業向け市場をターゲットにしています。普通 DSL は ISDN より安価で、T1 よりかなり劣ったサービスを提供します。しかし T1 に 見られるようなコスト高や面倒さ、利用しにくさといった問題を気にせずに、T1 より高速に利用できる可能性があります。DSL は"常時"専用で接続 するサービスなので、ISDN のように回線設置の遅れや使った分だけ料金がかかる ことはありません。この点が帯域不足で悩んでいる人々にとって魅力ある技術 となっています。
うれしいことだらけのように思えますが、DSL には欠点もあります。DSL の 信号つまり接続は、距離(より対銅線"回線"の長さ)やその他様々な 要因に依存しています。標準となる "DSL" もありません。様々な DSL が存在しており、DSL プロバイダは本当に様々な方法でネットワークを提供 しています。現状 Linux ユーザは、自分で何とかしなければいけない状況に あります。というのも DSL プロバイダは安易に"売れ筋の" オペレーティング・システムに対してだけ、対応しがちだからです。
この HOWTO で触れるトピックスは、適合試験や設置に当たっての事前作業、設置、 設定、トラブルシューティング、そして DSL 接続を安全に行うことです。他の 関連したトピックにも触れます。付録として包括的な DSL の概略とFAQ、リンク集、そして用語解説も付けています。
電話会社や DSL プロバイダ側が速いペースで移り変わるので、このドキュメントが 最新版であることを必ず確認してください。現在、正式版は http://www.linuxdoc.org/HOWTO/DSL-HOWTO/ にあります。事前公開版は http://feenix.burgiss.net/ldp/adsl/ にあります。
このドキュメントでは DSL について広範囲に議論するつもりです。複雑にからみ あったネットワークやハードウェア、新しい流りの技術、そしていろいろな ベンダーが提供する様々なアプローチを扱ったトピックをあらゆる角度で解決して いくつもりです。このドキュメントの構成の中心は下記の通りです。
設置セクションでは、DSL の ハードウェアと関連機器の設置方法を説明します。配線上の注意点や スプリッタやマイクロフィルタ、モデムやネットワーク・カードの取り付け方 を扱います。
Linux の設定セクションでは、主にクライ アント側とソフトウェアについて扱います。接続して動作可能にします。 ネットワーク・カードの設定については、上記の設置方法のセクションで扱い ます。
安全に接続するセクションでは、常時接続に 当たって非常に重要を持つ、セキュリティの意味について説明します。 Linux ユーザはクラッカーの標的にとてもなりやすいようです。Linux ユーザ はとてもおおらかで、セキュリティがいかに大切で精緻なのかを理解できない 人もいるからです。
チューニングとトラブルシューティング セクションでは、設置作業後にいかに接続の性能を向上させるか、という トピックやコンピュータが固まってしまったり、時々切断してしまう問題を 突き止める方法について説明します。
付録もたくさんついていて、Linux や DSL に関する様々なトピックについて 説明しています。また接続して動かすことに直接関連していないが、興味深い 事項についても解説します。
このドキュメントを読み進めるには、下記のガイドラインに従ってみてください。 まず必ず「はじめに」を読んでください。特に約束事と 利用方法、用語セクションは熟読してください。専門用語の中には別の 文脈において、多少異なる意味を持つものがあるからです。また、TA(電話業界の 頭文字)の世界で迷ってしまっても、用語解説が 用意してあります ;-)。
DSL について何も知らなくても、このドキュメントを通読できるはずです。 まず付録にあるDSL の概略セクション からはじめて、次に FAQ に進んでみてください。 DSL の概略では、それぞれ個々の要素がどのように組み合わさっているのかを 説明します。DSL ネットワークはこれまでのダイヤルアップ・ネットワークに 比べて、複雑な構成をとっています。
すでに下調べをしてあるが、まだどこにもサービスを申し込んでいないなら、 プロバイダを選ぶセクションを読んで ください。あわせて Linux に好意的な ISP セクションも読んでみてください。もちろん Linux の設定 セクションからはじめても結構です。これから何を しなければいけないのか、理解できると思います。
既にサービスを申し込んでいてサービス開始を待っている状態なら、 プロバイダの選択についてのセクションは飛ばしてもかまいません。自分で 設置するつもりなら、設置 や Linux の設定、 安全に接続するのそれぞれのセクションで、該当する部分を読んでくだ さい。
設置が完了したのにうまく接続できないなら、すぐに トラブルシューティングセクションを読んでください。 どんなプロトコルを使っていいかはっきりしなかったり、どんなソフトウェアを インストールすればいいのかわからなかったりしたなら、 Linux の設定も読んでください。ドキュメント 中で"同期"というような意味不明な言葉がある場合は、DSL の概略を必ず読んでください。そうすれば しっくりくるはずです。
ケーブルモデムか DSL か決めかねているなら、 Cable vs DSL セクションを読んでください。 DSL の概略も読んだ方がいいかもしれません。
インターネットに常時接続した経験がなかったり、安全に接続する方法 を完璧には理解できていないなら、安全に接続する セクションを必ず読んでください。読んでも理解できない点があるなら、 繰り返し読むか、別の資料を捜すようにしてください。
リンク集では、このドキュメントでは直接扱って いないトピックについて広く紹介してあります。
Version 1.3:付録の SpeedTouch USB HOWTO を更新。 PPPoE セクションを改訂し、Linux に好意的な ISP に 2 社追加。ドキュメントが 米国を中心とした記述にならないように、ほんの少し修正。その他多少の更新。
Version 1.2 には PPTP の設定に Alcatel のイーサネット・モデムを追加。 "チューニング"セクションに TCP Receive window と ADSL もしくは DMT の効率化 2 つを追加。Alcatel の USB モデムのドライバがオープン・ ソースで 2001 年 5 月にリリースされたというビックニュースを追加。Chris Jones 氏によって Alcatel SpeedTouch USB mini HOWTO を 付録 に追加。あちこちを更新。
Version 1.1 ではいくつかの訂正と更新と追加。新しい情報は実質なし。ついに Linux で利用可能な Xpeed の DSL PCI モデムが登場。カーネル 2.2.18 のソース コードにドライバが入った。
Version .99 はこのドキュメントのオリジナルである ADSL mini HOWTO が出てから 生じた数多く変更点の内のいくつかに対応。そもそも ADSL は最初に広まった DSL 技術ではあるが、他の DSL―IDSL や SDSL、G.Lite、RADSL―の特徴も反映 されている。このようにして "ADSL mini HOWTO" から "DSL HOWTO" に名称を変更した。また DSL 技術における数多くの進展も記述した。 PPPoE/A によるカプセル化は非常に多くの ISP で採用されてきており、主流に なってきている。
DSL HOWTO for Linux (formerly the ADSL mini HOWTO)
Copyright � 1998,1999 David Fannin.
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この HOWTO を手伝ってくれた方すべてに感謝致します。万が一のため、電子メール のアドレスは spam 避けをしてあります(私のものも!)。名前の部分から X を取って ください。
B Ediger (Xbediger@csn.net) 回線の 問題点についてのすばらしい記述
C Wiesner ( Xcraig@wkmn.com) 数多くの ADSL 関連の一覧作成
J Leeuw ( Xjacco2@dds.nl) ADSL についての たくさんの TIPS
N Silberstein ( Xnick@tpdinc.com) Netrunner についての情報と米国一悲惨な経験
comp.dcom.xdsl と bellsouth.net.support.adsl からの多種多様な投稿。 あまりに多量で個々に言及できないほど。 (HB)(?)
Juha Saarinen TCP Receive Window に ついてのアドバイスと解説及びそれに関連したチューニングについての トピック。
Chris Jones <chris@black-sun.co.uk> 付録にある Alcatel SpeedTouch USB mini HOWTO の著者。
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これからする説明を理解しやすいように、このドキュメントで使っている用語 のいくつかを明確にしておきましょう。この用語はあちこちに登場しますので。 下記に登場する定義のほとんどは、技術的に 100 % 正確ではありません。 しかし、ここでの目的は充分にカバーしています。DSL のようにめまぐるしく 変化する技術では、"もし、しかし"といった言葉が頻繁に現れます。 それはその事柄がどの程度正確で、どの程度かっちりしているかを断定できない からです。加えて例外が常につきまといます。ここではできるだけ広く一般的に 扱うつもりですので、心に留めておいてください。
"DSL" は現在利用可能な DSL 技術全体を意味する場合に使われます。 ―ADSL や SDSL、IDSL、RADSL 等がそれに当たります。ADSL は今でも最も普及して いると思いますが、その他のものもどんどん拡大しています。それぞれの DSL を区別する場合に大切なのは、略称を用いない固有名詞を使うことです。たとえば、 RADSL というように。xDSL は様々な DSL 技術を総称する場合に普通使います。 しかし、ここでは "DSL" という言葉を使います。
ここで言う"電話会社"という言葉は、DSL プロバイダになれる企業 を指します。これには 別名 ILEC (Incumbent Local Exchange Carrier)も入り ますし、Covad や Rhythms のような米国の独立系のプロバイダも入ります。
"CO" は、電話会社の用語で"電話局"を意味します。 これまではこの言葉は、個人の電話線が物理的に終端してある建物を意味して きました。しかしこのドキュメントでは、電話会社の終端点を指すことにします。 この言葉が電話局の建物なのか、そうではなくより小さく離れた場所にある構造物 もしくはデバイスなのか悩む必要はありません。
"回線"は、電話会社が言うところの"電話線"です。 回線といえば、普通はより対銅線回線が自宅やオフィスから直接専用で CO に つながっていると考えていいと思います。もちろんこれはあまりに単純化して しまっているのですが、このドキュメントでは言わんとすることを充分に伝えてい ます。DSL が利用できるかどうかや信号の品質は、物理的な電話線―電話会社 の言う "回線"―の質に直接影響を受けています。
"POTS" は昔からの電話サービスの頭文字です。つまり、昔ながら のデジタル化していない電話機や FAX、留守番電話のようなデバイスを指します。
"NID"(Network Interface Device)は、電話会社が家の外壁に 設置する小さなデバイスで、電話会社のサービスを受ける入り口に当たります。 電話会社によって場所は異なりますが、どこかにあるでしょう。"ONI " や "SNI"、"NIU"、"TNI" 等々、電話会社によってもいろいろ異なります。このデバイスのところで顧客と 電話会社の"境界"点を設けています。商業施設や集合住宅の場合 はもっとスマートに建物の内側のどこかに設置してあります。
"DSLAM" は電話会社の CO の中でも高度なハードウェア・デバイス です。DSLAM で 電話線を物理的に終端し、これで DSL が成り立っています。 電話会社は "mini-RAM" のような小さなデバイスを顧客側に設置 するようになってきています。ここでは "DSLAM" とは、電話 会社が提供する DSL を実現するあらゆるデバイスを意味します。 現在では多くの企業がこの機器を生産しています。
"モデム"はエンド・ユーザが DSL に接続するデバイスです。 モデムは電話局にある DSLAM に回線でつながっています。DSLを使って" 会話"し、"同期"し合います。"同期"し 合えなければ、ISP へは接続できません。
"モデム"は信号の変調と復調(MOdulation and DEModulation)を意味 する正式な用語です。しかし厳密に言えば、以前から皆さんも利用していた アナログのデバイスではありません。これらのモデムは普通は他の機能も持って います。 ISP や製造業者の中には、単に"ルーター"や"ブリッジ "、更には"ブルーター"として売り込んでいるところも あるようです。これらは基本的に DSL モデムを機能拡張したものです。互換 モデムと呼ばれるものの中には、顧客側の接続に必要な最低限のハードウェア しか持たないものもあります。広く行き渡っているモデムは、実際にはブリッジ とモデムの組み合わせがほとんどです。
特に明記しない限り、"モデム"にはイーサネット・インタフェース があり、標準的なイーサネット・カード(NIC)でつながると仮定します。圧倒的に 普及しているのがこの方法です。少なくとも PCI や USB モデムの Linux 用ドライバが更に普及するまでは、この形で行くでしょう。
DSL プロバイダが支給している"ルーター"は、一般的にはモデムと ルーターを組み合わせたデバイスですが、名前に深い意味はありません。 このドキュメントでは、そのようなデバイスを"ルーター"とみなし ます。SOHO 用のブロードバンド・ルーターもありますが、専用ルーターであって、 モデムの機能はありません。
旧版のドキュメントでは、モデムを"ANT"(ADSL Network Termination)としていました。これは技術的には正しい用語と言って差し支え ありませんが、ISP や メーカー、電話会社、またユーザでさえもこの言葉を 使っていません。どんな機能(たとえばルーターやブリッジ等)を持っていても、 "モデム"はモデムです。
PPPoX は PPPoE(PPP over Ethernet) や PPPoA(PPP over ATM)を総称して呼ぶ 場合に使います。現在これらのプロトコルは、DSL プロバイダの多くが利用 しています。
このドキュメントが提供する情報は、米国における DSL の現在の状況に基づいて います。米国以外の DSL サービスもほとんど同じだと思いますので、皆さんにも 役に立つのではないでしょうか。間違いがあれば訂正してください。電子メールは <hal@foobox.net>まで。
"#" は、通常 root が実行するコマンドを意味します。一方 "$" は、一般ユーザのプロンプトとして使います。